地域別最低賃金

地域別最低賃金(ちいきべつさいていちんぎん)とは、都道府県ごとに定められた最低賃金額のことであり、産業や職種にかかわりなく、その地域のすべての労働者と使用者に適用される賃金の下限を指す。最低賃金法(昭和34年法律第137号)に基づき、各都道府県労働局長が地方最低賃金審議会の調査審議を経て決定する制度である。

地域別最低賃金は、労働基準法に基づく労働条件の最低基準として機能し、正社員契約社員アルバイトなど雇用形態を問わず適用される。風俗関連産業を含むすべての産業において、使用者は地域別最低賃金額以上の賃金を支払う義務を負う。

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概要

地域別最低賃金は、日本国憲法第25条に定める生存権の理念を具体化した制度であり、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むための賃金保障の役割を担っている。2025年度(令和7年度)には、全国47都道府県すべてで時給1,000円を超える水準となり、全国加重平均で1,121円に達した。

この制度は、地域ごとの物価水準、労働者の賃金実態、企業の賃金支払能力などの経済実態を考慮して設定されるため、都道府県間で金額に差が生じている。最も高い東京都の1,226円から、最も低い高知県・宮崎県・沖縄県の1,023円まで、203円の格差が存在する。

地域別最低賃金は毎年見直しが行われ、通常10月頃に改定される。2025年度の改定では、過去最大となる66円の引き上げが実施され、全都道府県で初めて1,000円台に到達した歴史的な転換点となった。

最低賃金制度の法的根拠

最低賃金法の制定

日本における最低賃金制度は、1947年(昭和22年)に制定された労働基準法第28条に最低賃金に関する規定が設けられたことに始まる。しかし、労働基準法の規定だけでは実効性に乏しく、最低賃金制度への批判が強まった結果、1959年(昭和34年)に独立した法律として最低賃金法(昭和34年4月15日法律第137号)が制定された。

最低賃金法は制定以来、数度の改正を経て現在の形となっている。特に重要な改正として、2007年(平成19年)の改正により、労働者の生計費を考慮する際に「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」との条項(第9条第3項)が新設され、最低賃金と生活保護水準との逆転現象の解消が法的義務となった。

法律の目的と原則

最低賃金法第1条は、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与すること」を目的として定めている。

最低賃金法第9条は、地域別最低賃金の決定基準として以下の3要素を総合的に勘案することを規定している。

  1. 労働者の生計費 – 労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮する
  2. 労働者の賃金 – 地域における労働者の賃金の実態を考慮する
  3. 通常の事業の賃金支払能力 – 事業の経営状況や賃金支払能力を勘案する

地域別最低賃金の決定プロセス

中央最低賃金審議会の役割

地域別最低賃金の改定は、厚生労働省に設置された中央最低賃金審議会が中心的な役割を果たす。同審議会は、公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される三者構成の組織である。

中央最低賃金審議会は、毎年6月から8月にかけて開催され、全国的な整合性を図るため、各都道府県の地域別最低賃金の引き上げ額の目安を提示する。この目安は、全都道府県をABCの3ランクに分類し、各ランクの経済実態に応じた引き上げ額を答申する形式で示される。

ランク分類の基準

都道府県のランク分類は、以下のような経済指標を総合的に考慮して決定される。

  • Aランク(6都府県) – 東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、愛知県、千葉県
    • 大都市圏を中心とした経済規模が大きい地域
  • Bランク(28道府県) – 北海道、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県など
    • 中核都市を有する中規模経済圏
  • Cランク(13県) – 青森県、岩手県、秋田県、山形県、鳥取県、高知県、佐賀県など
    • 相対的に経済規模が小さい地域

2025年度の目安では、Aランクが63円、Bランクが63円、Cランクが64円の引き上げとなった。

地方最低賃金審議会による審議

中央最低賃金審議会が示した目安を受けて、各都道府県に設置された地方最低賃金審議会が、地域の実情を踏まえた具体的な金額を審議する。地方最低賃金審議会も三者構成であり、地域の労働者代表、使用者代表、公益代表が参加する。

地方最低賃金審議会は、以下の事項を調査審議する。

  1. 中央最低賃金審議会が示した目安との整合性
  2. 地域における労働者の生計費の実態
  3. 地域における賃金の実態
  4. 地域の事業の賃金支払能力
  5. 生活保護水準との乖離状況

審議の結果は都道府県労働局長に答申され、異議申出に関する手続きを経て、最終的に都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定する。

発効日の設定

地域別最低賃金の改定は、決定後速やかに官報に公示され、通常は10月1日前後に発効する。ただし、2025年度の改定では、発効日が例年より遅れる地域が多く、2025年10月中の発効は20都道府県にとどまり、福島県(2026年1月1日)、群馬県(2026年3月1日)、秋田県(2026年3月31日)など、2026年に入ってから発効する地域も存在した。

2025年度(令和7年度)都道府県別最低賃金一覧

全国の地域別最低賃金額

2025年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,121円(前年度比66円増)となり、過去最大の引き上げ幅を記録した。以下に都道府県別の最低賃金額を示す。

最低賃金ランキング(上位10位)

順位都道府県最低賃金額引上げ額発効日
1東京都1,226円63円2025年10月1日
2神奈川県1,225円63円2025年10月1日
3大阪府1,177円63円2025年10月1日
4埼玉県1,141円63円2025年10月1日
5千葉県1,140円64円2025年10月1日
5愛知県1,140円63円2025年10月1日
7京都府1,122円64円2025年10月16日
8兵庫県1,116円63円2025年10月1日
9静岡県1,097円64円2025年10月5日
10三重県1,087円63円2025年10月1日

最低賃金ランキング(下位10位)

順位都道府県最低賃金額引上げ額発効日
45高知県1,023円64円2025年10月4日
45宮崎県1,023円64円2025年10月5日
45沖縄県1,023円64円2025年10月8日
42佐賀県1,025円64円2025年10月4日
42大分県1,025円64円2025年10月1日
42鹿児島県1,025円64円2025年10月6日
40山形県1,027円64円2025年10月20日
40長崎県1,027円64円2025年10月18日
38秋田県1,029円64円2026年3月31日
38青森県1,029円76円2025年11月21日

詳細な全都道府県の最低賃金額は、厚生労働省の公式サイトで確認できる。

地域間格差の現状

最も高い東京都(1,226円)と最も低い3県(1,023円)との間には203円(約19.8%)の格差が存在する。この格差は、物価水準、産業構造、労働市場の需給状況など、地域間の経済格差を反映したものである。

政府は、地域間格差の是正を目指し、2022年度まで4ランク(ABCD)だった分類を2023年度から3ランク(ABC)に統合するなど、格差縮小に向けた取り組みを進めている。

最低賃金の歴史的経緯と推移

制度創設期(1947年-1968年)

1947年(昭和22年)の労働基準法制定時に最低賃金の規定が設けられたが、当初は業者間協定や労働協約の拡張適用による限定的な制度であった。1959年(昭和34年)の最低賃金法制定により、初めて独立した法律に基づく最低賃金制度が確立した。

制定当初の最低賃金法は業者間協定方式を採用しており、同一産業の労使間の自主的な協定を基礎としていた。しかし、この方式では最低賃金の決定が不十分であるとの批判があり、1968年(昭和43年)に審議会方式へと移行した。

目安制度の導入(1978年)

1978年(昭和53年)、全国的な整合性を確保するため、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会に対して引き上げ額の目安を提示する目安制度が導入された。この制度により、地域間格差を考慮しながらも全国的に均衡のとれた最低賃金の引き上げが可能となった。

大幅引き上げ期(2007年以降)

2007年(平成19年)の最低賃金法改正により、生活保護との整合性が法律上明記されたことを契機に、最低賃金の引き上げペースが加速した。2007年度の全国加重平均は687円であったが、以降は毎年着実に上昇を続けている。

特に2021年度以降は、5年連続で過去最高額を更新している。

  • 2021年度: 930円(前年度比28円増)
  • 2022年度: 961円(前年度比31円増)
  • 2023年度: 1,004円(前年度比43円増)
  • 2024年度: 1,055円(前年度比51円増)
  • 2025年度: 1,121円(前年度比66円増)

1,000円時代の到達(2023年-2025年)

2023年度には、全国加重平均が初めて1,000円を突破した。さらに2025年度には、すべての都道府県で時給1,000円を超える歴史的な転換点を迎えた。この達成は、長年にわたる労働組合や市民団体の運動、政府の働き方改革政策の成果と位置づけられている。

過去50年間の推移を見ると、1977年度の全国加重平均は318円であり、約48年間で3.5倍以上に増加したことになる。

特定最低賃金との関係

特定最低賃金(産業別最低賃金)の概要

特定最低賃金(とくていさいていちんぎん)は、特定の産業について、地域別最低賃金よりも高い水準で設定される最低賃金である。産業別最低賃金とも呼ばれ、関係労使(労働組合と使用者団体)の申出に基づき、地方最低賃金審議会の調査審議を経て決定される。

特定最低賃金は、全国で228件設定されており、そのうち7割を超える168件が金属産業に関わるものである。その他、自動車産業、電機産業、印刷業など、技能や専門性が求められる産業で多く設定されている。

地域別最低賃金との適用関係

地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される労働者については、高い方の最低賃金額が適用される。これは最低賃金法第6条に規定されており、労働者にとってより有利な条件を保障する仕組みとなっている。

例えば、ある都道府県の地域別最低賃金が1,100円、当該産業の特定最低賃金が1,150円である場合、その産業の労働者には1,150円が適用される。

適用除外規定の違い

地域別最低賃金は、原則としてすべての労働者に適用されるが、特定最低賃金には一定の適用除外規定がある。

地域別最低賃金の適用除外

  • 精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者(都道府県労働局長の許可が必要)
  • 試用期間中の者(都道府県労働局長の許可が必要)
  • 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうち一定の者(同上)
  • 軽易な業務に従事する者(同上)
  • 断続的労働に従事する者(同上)

特定最低賃金の適用除外

  • 18歳未満または65歳以上の者
  • 雇入れ後一定期間未満で技能習得中の者
  • 清掃または片付けの業務に主として従事する者
  • その他産業に特有の軽易な業務に従事する者

特定最低賃金は、産業の基幹的労働者を対象としているため、地域別最低賃金よりも適用除外の範囲が広く設定されている。

罰則規定の違い

地域別最低賃金と特定最低賃金では、違反した場合の罰則が異なる。

  • 地域別最低賃金違反: 最低賃金法第40条により、50万円以下の罰金
  • 特定最低賃金違反: 労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)違反として、30万円以下の罰金

地域別最低賃金の方が罰則が重いのは、すべての労働者の最低限の生活を保障する基盤的な制度であることを反映している。

最低賃金の適用範囲

適用される労働者

地域別最低賃金は、雇用形態や年齢、国籍、性別にかかわらず、以下のすべての労働者に適用される。

  1. 正規雇用労働者正社員契約社員など
  2. 非正規雇用労働者アルバイト、パートタイマー、臨時雇用者、嘱託社員など
  3. 外国人労働者 – 在留資格の種類を問わず適用
  4. 未成年労働者 – 年齢による例外規定なし
  5. 試用期間中の労働者 – 原則として適用(減額の特例許可制度あり)

風俗関連産業においても、ソープランドデリヘル(デリバリーヘルス)ホテヘルファッションヘルスピンサロ(ピンクサロン)オナクライメクラ(イメージクラブ)M性感などの性風俗関連特殊営業キャバクラガールズバーホストクラブなどの接待飲食等営業で雇用される労働者にも、最低賃金は等しく適用される。

業務委託との区別

業務委託契約で働く者は、労働者ではなく個人事業主として扱われるため、原則として最低賃金法の適用対象外となる。しかし、実質的に使用従属関係があり、労働者性が認められる場合には、契約形態にかかわらず最低賃金法が適用される。

風俗産業においては、キャスト(従業員)を業務委託契約として扱うケースも見られるが、実態が雇用関係にあたる場合には、最低賃金法の適用を免れることはできない。労働者性の判断基準としては、指揮命令の有無、時間的・場所的拘束性、報酬の労務対償性、事業者性の程度などが総合的に考慮される。

2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、フリーランスとして働く者の保護も強化されている。

最低賃金の対象となる賃金

最低賃金の計算対象となる賃金は、基本給と諸手当の合計額である。ただし、以下の賃金は最低賃金の対象から除外される。

  1. 臨時に支払われる賃金 – 結婚手当、私傷病手当、見舞金など
  2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金 – 賞与、ボーナスなど
  3. 時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金
  4. 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

したがって、最低賃金との比較においては、基本給に加えて、役職手当、技能手当、資格手当などの通常支払われる手当を含めて計算する。

最低賃金違反への対応

罰則規定

地域別最低賃金を下回る賃金を支払った使用者には、最低賃金法第40条に基づき、50万円以下の罰金が科される。この罰則は、法人に対しても適用されるため、企業としての法令遵守体制が問われる。

特定最低賃金を下回る賃金を支払った場合は、最低賃金法の罰則は適用されないが、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)違反として、30万円以下の罰金が科される。

労働基準監督署による監督指導

労働基準監督署(労基署)は、最低賃金法の履行確保を目的として、定期的な監督指導および労働者からの申告に基づく調査を実施している。

監督指導の流れ

  1. 立ち入り調査 – 労働基準監督官が事業所に立ち入り、賃金台帳、出勤簿、労働契約書などを確認
  2. 是正勧告 – 最低賃金違反が確認された場合、是正勧告書が交付される
  3. 改善報告 – 事業者は指定期日までに改善状況を報告する
  4. 再調査 – 改善が不十分な場合、再度立ち入り調査が行われる
  5. 送検 – 悪質な違反や是正勧告に従わない場合、刑事告発(送検)される

最低賃金違反が確認された場合、差額分の未払賃金を遡って支払う義務が生じる。賃金請求権の時効は、2020年4月以降の賃金については3年間(それ以前は2年間)である。

労働者からの申告制度

労働者が最低賃金違反を発見した場合、労働基準監督署(労基署)に申告することができる。申告は、電話、訪問、メールなど複数の方法で行うことが可能である。

労働基準監督署は、申告者のプライバシーを保護する義務があり、申告したことを理由として事業者が労働者に不利益な取扱いをすることは、労働基準法第104条により禁止されている。

民事上の請求

最低賃金法第4条第2項は、「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす」と規定している。

したがって、最低賃金を下回る契約を結んでいた場合でも、労働者は最低賃金額との差額を請求する権利を有する。請求方法としては、以下がある。

  1. 直接請求 – 使用者に対して直接未払賃金の支払いを求める
  2. 労働審判 – 裁判所の労働審判手続きを利用する
  3. 民事訴訟 – 民事訴訟を提起して差額を請求する
  4. 労働基準監督署への申告 – 行政による是正指導を求める

生活保護との整合性

生活保護水準との比較

2007年の最低賃金法改正により、地域別最低賃金を決定する際には「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」ことが法律上義務付けられた(第9条第3項)。これは、フルタイムで働いても生活保護水準を下回る収入しか得られない逆転現象を解消することを目的としている。

生活保護水準との比較は、以下の方法で行われる。

  1. 生活保護の生活扶助基準(第1類・第2類)および住宅扶助、医療扶助の合計額を算出
  2. これを月173.8時間(週40時間×52週÷12月)で除して時間額に換算
  3. 地域別最低賃金額と比較し、乖離額を算出

2025年度の改定により、すべての都道府県で最低賃金が生活保護水準を上回る状態が実現した。しかし、最低賃金で得られる月収(フルタイム勤務を想定)と生活保護による給付額との間には、なお2万円程度の開きがあるとの指摘もある。

乖離解消の取り組み

2008年の改正最低賃金法施行後、中央最低賃金審議会は生活保護との乖離が大きい都道府県に対して、より高い引き上げ額の目安を提示してきた。この結果、2012年度には11都道府県で乖離が認められていたが、2025年度にはすべての都道府県で乖離が解消された。

ただし、生活保護基準自体が2013年以降段階的に引き下げられており、最低賃金との逆転現象が解消されたのは、最低賃金の引き上げだけでなく生活保護基準の引き下げも影響しているとの批判もある。

最低賃金と風俗産業

風俗産業における最低賃金の適用

風俗産業においても、地域別最低賃金は全面的に適用される。ソープランドデリヘル(デリバリーヘルス)ホテヘルなどの無店舗型性風俗特殊営業ファッションヘルスピンサロ(ピンクサロン)オナクラなどの店舗型性風俗特殊営業で雇用される従業員(ドライバー、店舗スタッフ、ボーイなど)には、当然に最低賃金法が適用される。

キャバクラホストクラブセクキャバおっぱいパブなどの接待飲食等営業においても同様である。

歩合給制度と最低賃金

風俗産業では、本指名や売上に応じた歩合給制度が一般的である。歩合給制度であっても、最低賃金法は適用される。

歩合給のみの場合、総支給額を総労働時間で除した時間給が最低賃金を下回ってはならない。固定給と歩合給を併用する場合は、その合計額が最低賃金を下回らないよう管理する必要がある。

待機時間と最低賃金

デリヘル(デリバリーヘルス)のドライバーなど、客待ちの待機時間が発生する職種においては、待機時間が労働時間に該当するか否かが問題となる。

使用者の指揮命令下にあり、自由に離脱できない待機時間は労働時間とみなされ、最低賃金の支払い対象となる。一方、完全に自由な休憩時間は労働時間に含まれない。

関連法規との関係

労働基準法との関係

最低賃金法は、労働基準法と密接に関連する。労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律であり、最低賃金法はその賃金に関する部分を具体化したものと位置づけられる。

労働基準法第24条は賃金全額払いの原則を定めており、最低賃金未満の賃金を支払った場合、差額が未払賃金として同条違反となる。また、労働基準監督署(労基署)は、労働基準法と最低賃金法の両方を監督する権限を有している。

労働三法との関係

最低賃金制度は、労働基準法労働組合法労働関係調整法からなる労働三法と相互補完的な関係にある。特に労働組合法は、労働者の団結権や団体交渉権を保障しており、特定最低賃金の決定においては労使の交渉が重要な役割を果たす。

職業安定法との関係

職業安定法は、求人情報に虚偽の内容を記載することを禁止している(第65条)。最低賃金を下回る求人を出すことは、法令違反となる労働条件を提示することになり、同法違反となる可能性がある。

風俗男性求人においても、求人広告に記載する賃金は最低賃金以上でなければならず、実際の支払額も最低賃金を下回ってはならない。

風営法との関係

風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、風俗営業性風俗関連特殊営業の規制を定めた法律であり、営業許可や届出、営業時間規制などを規定している。

風営法の規制対象となる事業であっても、雇用する労働者に対しては最低賃金法が適用される。風営法の許可や届出の有無にかかわらず、最低賃金を支払う義務は変わらない。

今後の展望

政府目標との関係

政府は、2023年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針2023)において、「2029年までに最低賃金の全国加重平均が1,500円となることを目指す」との目標を掲げている。

2025年度の全国加重平均が1,121円であることから、この目標を達成するためには、今後4年間で年平均94.75円の引き上げが必要となる。これは近年の引き上げペースを大幅に上回る水準であり、企業の生産性向上や賃金支払能力の向上が課題となる。

地域間格差の是正

最低賃金の地域間格差は、地方から都市部への人口流出の一因となっているとの指摘がある。政府は、地域間格差の是正を重要課題として位置づけ、2022年度に従来の4ランク制を3ランク制に統合するなどの措置を講じている。

しかし、地域間の経済力格差が解消されない限り、最低賃金の格差を完全になくすことは困難である。地方における産業振興や企業誘致など、総合的な地域経済政策との連携が求められている。

国際比較

OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本の最低賃金水準は中位程度に位置している。購買力平価で調整した時給換算では、オーストラリア、ルクセンブルク、フランス、ドイツなどが日本を上回っている。

一方、最低賃金と平均賃金の比率(カイツ指数)を見ると、日本は約45%(2024年)であり、OECD平均の約50%を下回っている。この指標は、最低賃金が一般的な賃金水準に対してどの程度の保障を提供しているかを示すものであり、日本の最低賃金にはなお引き上げの余地があることを示唆している。

脚注・注釈・出典

法令

  1. 最低賃金法(e-Gov法令検索)
  2. 労働基準法(e-Gov法令検索)
  3. 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)

行政機関による公式資料

  1. 厚生労働省 – 最低賃金制度の概要
  2. 厚生労働省 – 地域別最低賃金の全国一覧
  3. 厚生労働省 – 令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について
  4. 厚生労働省 – 令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧(PDF)
  5. 厚生労働省 – あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度

研究機関・統計資料

  1. 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT) – 図3 最低賃金(地域別最低賃金 全国加重平均額) 1975年度~2025年度
  2. 独立行政法人労働政策研究・研修機構 – すべての都道府県が1000円超に ――2025年度の地域別最低賃金改定
  3. 独立行政法人労働政策研究・研修機構 – 地域間格差の是正を目指して最低賃金のランクを4区分から3区分に統合

民間調査・研究

  1. ジョブメドレー – 【2025年版】全国最低賃金一覧&全国ランキング
  2. co-medical – 【2025年最新版】全国最低賃金マップ&都道府県ランキング!
  3. エデンレッドジャパン – 【2025年度最新】最低賃金ランキング&全国都道府県別の給与水準マップ
  4. マイナビバイト公式メディア – 2025年全国最低賃金一覧

解説記事

  1. 連合(日本労働組合総連合会) – 労働・賃金・雇用 最低賃金 「地域別最低賃金」とは?
  2. 連合 – 労働・賃金・雇用 最低賃金 特定(産業別)最低賃金とは?
  3. Manegy – 最低賃金の歴史

関連項目

関連する労働法規

雇用形態・労働条件

監督機関

風俗産業関連

風俗業態

外部リンク

行政機関

労働組合・労働団体

研究機関


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