労働災害補償(ろうどうさいがいほしょう、英:Workers’ Compensation)とは、労働者が業務に起因して負傷、疾病、障害または死亡した場合に、使用者または保険制度により行われる補償および給付のことを指す。日本においては、労働基準法に基づく使用者の災害補償責任と、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく労災保険給付の二つの制度が存在し、労災保険制度が使用者の補償責任を担保する仕組みとなっている。労働災害による被災労働者やその遺族の生活を保障し、社会復帰を促進することを目的とした社会保険制度の一つである。
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概要
労働災害補償は、労働者が業務上の事由または通勤によって被った災害に対して行われる補償制度である。日本の法体系においては、労働基準法第75条から第88条に使用者の災害補償責任が規定されており、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料などが定められている。
しかし、使用者の資力不足による補償の不履行を防ぐため、1947年(昭和22年)に労働者災害補償保険法が制定され、国による労災保険制度が確立された。同法第1条において「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、被災労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護等を図る」ことが目的として明記されている。
労災保険制度では、労働基準法第84条に基づき、労災保険給付が行われる場合には使用者の災害補償責任が免除される仕組みとなっている。これにより、労働者は使用者の支払能力に関わらず、確実な補償を受けることが可能となっている。労災保険の適用対象は、正社員、契約社員、アルバイト、パートタイム労働者など、雇用形態を問わずすべての労働者である。
2020年9月には労働者災害補償保険法が改正され、複数の事業場で働く副業・兼業者(複数事業労働者)に対して、すべての就業先の賃金を合算した額を基礎として保険給付額が決定される制度が導入された。また、2023年9月には精神障害の労災認定基準が改正され、カスタマーハラスメント(顧客や取引先からの著しい迷惑行為)や感染症対応などが心理的負荷の評価対象として明示された。
2026年1月には、労働政策審議会から厚生労働大臣に対して労災保険制度の見直しに関する建議が提出され、遺族補償年金における男女格差の解消(夫の受給要件である55歳以上という年齢制限の撤廃)、精神疾患等の時効期間の2年から5年への延長、農林水産業の強制適用化などが提言されており、今後の法改正が見込まれている。
法的根拠と制度の二重構造
労働基準法による災害補償責任
労働基準法第8章(第75条から第88条)には、使用者の災害補償責任が規定されている。これは使用者の過失の有無を問わず、労働者が業務上の事由により負傷または疾病にかかった場合に、使用者が負担すべき無過失責任である。
主な補償の種類は以下の通りである。
| 補償の種類 | 法的根拠 | 補償内容 |
|---|---|---|
| 療養補償 | 労働基準法第75条 | 業務上の負傷または疾病について、必要な療養またはその費用を負担 |
| 休業補償 | 労働基準法第76条 | 療養のため労働できない期間、平均賃金の100分の60を支給 |
| 障害補償 | 労働基準法第77条 | 身体に障害が残った場合、障害の程度に応じて平均賃金の一定日数分を支給 |
| 遺族補償 | 労働基準法第79条 | 死亡した場合、平均賃金の1,000日分を遺族に支給 |
| 葬祭料 | 労働基準法第80条 | 死亡した場合、平均賃金の60日分を支給 |
ただし、労働基準法第81条には療養開始後3年経過しても治癒しない場合の打切補償(平均賃金の1,200日分)の規定があり、これにより使用者の長期的な補償負担を制限する仕組みも設けられている。
労働者災害補償保険制度
労働者災害補償保険法に基づく労災保険制度は、労働基準法上の使用者の災害補償責任を担保し、より手厚い保護を実現するために設けられた社会保険制度である。労災保険料は全額事業主が負担し、労働者の保険料負担は存在しない。
労災保険が給付される場合、労働基準法第84条の規定により、同一の事由については使用者の災害補償責任は免除される。これにより、労働者は使用者の経営状況や資力に関係なく、確実な補償を受けることができる。
労災保険制度では、労働基準法の補償に加えて、特別支給金、傷病補償年金、介護補償給付、二次健康診断等給付などの独自の給付も行われており、被災労働者への保護がより手厚くなっている。
補償免責の関係
労働基準法第84条第1項は、「この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免かれる」と定めている。
これにより、労災保険給付が行われる限り、使用者は労働基準法上の災害補償義務を履行する必要がなくなる。ただし、労災保険給付は損害のすべてを填補するものではないため、労働者が民法上の損害賠償請求権を行使することは可能であり、労災保険給付がなされた場合には同一の事由についてその価額の限度において民法の損害賠償責任を免れるという関係にある(労働基準法第84条第2項類推)。
労災保険給付の種類と内容
労災保険給付は、業務災害(業務上の事由による災害)と通勤災害(通勤による災害)に大別され、それぞれについて以下の給付が行われる。業務災害の場合は「補償給付」、通勤災害の場合は「給付」と呼称される。
主要な保険給付
| 給付の種類 | 支給事由 | 給付内容 | 特別支給金 |
|---|---|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 業務災害または通勤災害による傷病により療養するとき | 必要な療養の給付または療養費用の全額 | なし |
| 休業(補償)等給付 | 傷病の療養のため労働できず賃金を受けられないとき | 休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%相当額 | 休業特別支給金(給付基礎日額の20%) |
| 障害(補償)等給付 | 傷病が治癒後、障害等級第1級から第14級に該当する障害が残ったとき | 年金(第1~7級)または一時金(第8~14級)として給付基礎日額の313日分~56日分 | 障害特別支給金、障害特別年金・一時金 |
| 遺族(補償)等給付 | 業務災害または通勤災害により死亡したとき | 遺族の数等に応じ給付基礎日額の245日分~153日分の年金、または1,000日分の一時金 | 遺族特別支給金(一律300万円)、遺族特別年金・一時金 |
| 葬祭料・葬祭給付 | 死亡した労働者の葬祭を行うとき | 315,000円+給付基礎日額の30日分(最低でも給付基礎日額の60日分) | なし |
| 傷病(補償)等年金 | 療養開始後1年6か月経過後も治癒せず、傷病等級に該当するとき | 障害の程度に応じ給付基礎日額の313日分~245日分の年金 | 傷病特別支給金、傷病特別年金 |
| 介護(補償)等給付 | 障害年金・傷病年金受給者で第1級または第2級の精神神経・胸腹部臓器障害があり現に介護を受けているとき | 常時介護:最大105,130円、随時介護:最大52,570円(親族介護の場合は最低保障額あり) | なし |
二次健康診断等給付
二次健康診断等給付は、事業主が実施する定期健康診断等において、脳・心臓疾患に関連する4つの検査項目(血圧、血中脂質、血糖、肥満)のすべてに異常所見が認められた労働者を対象として、脳血管・心臓の状態を把握するための二次健康診断および特定保健指導を、労働者の自己負担なく受けることができる制度である。これは脳・心臓疾患の予防を目的とした予防的給付であり、年度内に1回限り利用可能である。
給付基礎日額と算定基礎日額
労災保険給付の額を算定する基礎となるのが給付基礎日額である。給付基礎日額は、原則として被災直前3か月間の賃金総額をその期間の暦日数で除した額とされる。また、ボーナスなど特別給与については、算定基礎日額(原則として被災直前1年間の特別給与総額を365で除した額)として別途算定され、特別支給金や特別年金・特別一時金の算定基礎となる。
これらの基礎日額は、賃金水準の変動に応じて自動的にスライド(増減)する仕組みが設けられており、長期にわたる年金給付においても実質的な給付水準が維持される工夫がなされている。
労災認定の基準
業務災害の認定基準
業務災害として労災認定されるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の二つの要件を満たす必要がある。
業務遂行性とは、労働者が使用者の支配下にある状態で災害が発生したことを指す。具体的には、①事業主の支配・管理下で業務に従事している場合、②事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合(休憩時間など)、③事業主の支配下にあるが管理下を離れて業務に従事している場合(出張など)の三つの類型に分けられる。
業務起因性とは、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることを指す。業務と傷病等との間に相当因果関係が認められる必要があり、業務が傷病等の発生または増悪の原因となったことが客観的に認められなければならない。
業務上疾病については、労働基準法施行規則別表第1の2において認定対象となる疾病が列挙されており、化学物質による疾病、粉じんによる疾病、物理的因子による疾病、作業態様に起因する疾病、病原体による疾病などが含まれる。
通勤災害の認定基準
通勤災害は、労働者が通勤によって被った災害を指す。労働者災害補償保険法第7条第2項において、「通勤」とは、就業に関し、①住居と就業の場所との間の往復、②就業の場所から他の就業の場所への移動、③単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路および方法により行うことと定義されている。
ただし、通勤の途中で逸脱または中断があった場合には、その後は原則として通勤とは認められない。例外として、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるもの(日用品の購入、職業訓練、選挙権の行使、病院での診察など)を最小限度の範囲で行う場合の逸脱・中断は、その間を除き通勤として扱われる。
精神障害の労災認定基準
精神障害の労災認定については、2011年(平成23年)に策定された「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」に基づいて判断が行われてきたが、2023年(令和5年)9月1日に同基準が改正された。
精神障害が労災として認められるためには、以下の3要件をすべて満たす必要がある。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 発病前おおむね6か月以内に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
2023年改正では、具体的出来事として「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されたほか、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」という項目も明示された。これにより、接客業や医療・介護従事者などが直面する心理的負荷が、より適切に評価される体制が整備された。
また、心理的負荷評価表における具体的出来事が見直され、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」について、パワーハラスメントの6類型(身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)に沿った分類が示され、より詳細な評価が可能となっている。
適用事業と対象労働者
適用事業
労災保険は、労働者を一人でも雇用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべて適用事業となる強制保険制度である。ただし、農林水産業の一部については、暫定的に任意適用事業とされてきた経緯がある。
2026年1月の労働政策審議会建議では、農林水産業についても強制適用化することが提言されており、今後法改正により適用範囲が拡大される見込みである。
対象労働者
労災保険の適用対象となる労働者は、正社員、契約社員、アルバイト、パートタイム労働者など、名称や雇用形態にかかわらず、労働の対価として賃金を受けるすべての者である。労働時間の長短や雇用契約期間の長短も問われない。
ただし、法人の代表取締役、合名会社・合資会社の代表社員、個人事業主などは、原則として労働者ではないため労災保険の適用対象外となる。これらの者が労災保険の保護を受けるためには、特別加入制度を利用する必要がある。
特別加入制度
特別加入制度とは、労働者以外の者であっても、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することが適当と認められる者について、一定の要件のもとに任意加入を認める制度である。
特別加入の対象者は、以下の4つに大別される。
- 中小事業主等:労働者を常時使用する中小事業主およびその事業に従事する者
- 一人親方等:個人タクシー業者、大工、左官、とび職などの一人親方や特定作業従事者
- 特定作業従事者:特定農作業従事者、特定漁船の船員、家内労働者など
- 海外派遣者:海外の事業に派遣される者
2021年(令和3年)4月からは、芸能関係作業従事者、アニメーション制作作業従事者、柔道整復師、創業支援等措置に基づき事業を行う者(スタートアップ企業の役員等)、原動機付自転車・自転車を使用して貨物運送を行う者(フードデリバリー配達員等)が新たに特別加入の対象に追加された。
保険料負担と財政
労災保険料の仕組み
労災保険料は、全額を事業主が負担する。労働者の保険料負担は存在しない。保険料額は、「賃金総額×労災保険料率」により算定される。
労災保険料率は、事業の種類ごとに災害率等に応じて厚生労働大臣が定めることとされており、業種によって大きく異なる。2024年度に改定が行われ、2025年度および2026年度は前年度と同じ料率が適用されている。最も低い料率は金融業・保険業等の2.5/1000であり、最も高い料率は金属鉱業等の88/1000となっている。
保険料率は原則として3年ごとに見直しが行われ、過去3年間の災害率等を考慮して改定される。
メリット制
労災保険には、個別の事業における労働災害の発生状況に応じて保険料率を増減させるメリット制という仕組みがある。これは、事業主の災害防止努力を促進し、保険料負担の公平性を確保することを目的としている。
メリット制は、一定規模以上の継続事業(概ね常時100人以上の労働者を使用する事業)や建設業等の有期事業に適用される。労働災害の多寡(保険給付額と労災保険料の比率)に応じて、非業務災害率を除いた労災保険料率の±40%の範囲内で保険料率が増減される。
さらに、中小企業等を対象とした特例メリット制も設けられており、所定の安全衛生措置を講じた場合には、メリット増減率の範囲が最大45%まで拡大される。
労働保険料の年度更新
労働保険(労災保険と雇用保険)の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度)を単位として計算される。事業主は、毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付する「年度更新」の手続きを行わなければならない。
労災保険制度の課題と今後の展開
複数事業労働者への対応
働き方の多様化に伴い、副業・兼業を行う労働者(複数事業労働者)が増加している。2020年9月の労働者災害補償保険法改正により、複数の事業場で働く労働者が業務上の災害に遭った場合、すべての就業先の賃金を合算した額を基礎として保険給付額が決定される制度が導入された。
これにより、従来は主たる就業先の賃金のみを基礎として算定されていた給付額が、実態に即した水準に改善された。また、複数の事業場における業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行う「複数業務要因災害」の制度も創設され、個々の事業場の負荷が単独では労災認定基準を満たさない場合でも、複数の事業場の負荷を総合評価することで労災認定が可能となっている。
精神障害の増加への対応
精神障害による労災請求件数は年々増加しており、2024年度の集計では過去最高を更新している。2023年9月の認定基準改正により、カスタマーハラスメントや感染症対応などが明示的に評価対象となったことで、より実態に即した認定が可能となった。
今後は、長時間労働の削減、職場のハラスメント防止対策の強化、メンタルヘルス対策の充実などにより、精神障害の発生を予防することが重要な課題となっている。
2026年建議による制度見直し
2026年1月14日、労働政策審議会は厚生労働大臣に対して「労災保険制度の見直しについて(建議)」を提出した。主な見直し内容は以下の通りである。
- 遺族補償年金における男女格差の解消:夫が遺族補償年金を受給するための55歳以上という年齢要件を撤廃し、妻と同じ条件とする
- 消滅時効期間の延長:精神疾患等一部の疾病について、請求権の消滅時効を2年から5年に延長する
- 農林水産業の強制適用化:暫定的に任意適用とされてきた農林水産業についても強制適用とする
- 特別加入制度の拡充:新たな働き方に対応した特別加入対象者の拡大を検討する
これらの見直しは、就業構造の変化や働き方の多様化を踏まえ、労災保険のセーフティネット機能を強化することを目的としている。今後、法律案要綱が作成され、労働政策審議会への諮問を経て、法改正が進められる見込みである。
労災隠しの防止
労災隠しとは、労働災害が発生したにもかかわらず、事業主が労働基準監督署への報告を怠ったり、労働者に労災申請をしないよう求めたりする行為を指す。労働安全衛生法第100条は、事業主に対して死傷病報告の提出義務を課しており、これに違反した場合には同法第120条により50万円以下の罰金に処せられる。
労災隠しが行われると、労働者は適切な補償を受けられず、また災害の実態が把握できないため災害防止対策が適切に講じられないという問題が生じる。労働基準監督署では、労災隠しの防止に向けた監督指導を強化しており、労働者からの相談や通報に基づいて調査を行っている。
労働者は、事業主を通さずに直接労働基準監督署に労災申請を行うことができ、事業主が協力を拒否した場合でも、労働基準監督署が職権で調査を行い、労災認定の可否を判断する仕組みとなっている。
関連分野の基礎知識
労働三法との関係
労働災害補償に関わる法制度は、労働三法と密接に関連している。労働基準法が使用者の災害補償責任を定め、労働組合法が労働者の団結権を保障し、労働関係調整法が労働争議の調整を図ることで、労働者の権利が総合的に保護されている。
社会保険制度における位置づけ
労災保険は、社会保険制度の一つとして位置づけられる。日本の社会保険制度は、医療保険(健康保険)、年金保険(厚生年金保険、国民年金)、介護保険、雇用保険、労災保険の5つから構成されており、それぞれが国民生活の異なるリスクに対応している。
労災保険は業務上の災害に対応する制度であるのに対し、健康保険は業務外の疾病・負傷に対応する。また、雇用保険は失業時の生活保障を目的としており、労災保険とともに労働保険を構成している。
労働基準監督署の役割
労働基準監督署は、労働基準法その他の労働者保護法令の施行を確保するための行政機関であり、労災保険制度の運営においても中心的な役割を果たしている。労災保険給付の請求は労働基準監督署に対して行われ、同署が調査を実施したうえで支給・不支給の決定を行う。
労働基準監督署には労働基準監督官が配置されており、司法警察権限を有する。労働災害が発生した場合の原因調査、災害防止対策の指導、労働安全衛生法違反に対する監督・是正勧告などを行っている。
雇用形態と労働災害補償
正社員、契約社員、アルバイトなど、雇用形態にかかわらず労働者であれば労災保険の適用対象となる。一方、業務委託契約により働く者は、原則として労働者ではないため労災保険の適用対象外となるが、実質的に労働者性が認められる場合には労災保険が適用される可能性がある。
有期雇用労働者や無期雇用労働者の区別も労災保険の適用には影響せず、すべての労働者が平等に保護される。
解雇制限との関連
解雇制限との関連において、労働基準法第19条は、労働者が業務上の傷病により療養のために休業する期間およびその後30日間は、使用者は解雇してはならないと定めている。ただし、使用者が労働基準法第81条の打切補償を支払った場合、または天災事変等やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(労働基準監督署長の認定が必要)には、この解雇制限は適用されない。
特殊な業種における労働災害補償
風俗業やホストクラブ、キャバクラなどの接待飲食等営業においても、労働者として雇用されている場合には労災保険が適用される。ただし、これらの業種では業務委託契約の形態をとっている場合も多く、契約形態の実質的な判断が重要となる。
デリヘルなどの無店舗型性風俗特殊営業やソープランドなどの店舗型性風俗特殊営業においては、風営法による規制との関係で、従業員の労働者性が争点となることもある。性感染症などの職業性疾病についても、業務起因性が認められれば労災認定の対象となりうる。
脚注・注釈・出典
- 厚生労働省「1-1 労災保険制度の概要について教えてください。」
- e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)」
- 厚生労働省「1-2 各労災保険給付の支給事由と内容について教えてください。」
- 厚生労働省「労働政策審議会建議『労災保険制度の見直しについて』を公表します」(令和8年1月14日)
- 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」(令和5年9月1日)
- 厚生労働省「令和8年度の労災保険率について」
- 福井労働局「使用者の災害補償責任と労災保険給付の関係」
- 厚生労働省「特別加入制度とは何ですか。」
- 厚生労働省「労災保険二次健康診断等給付」








