労働組合法

労働組合法は、労働者が使用者と対等な立場で労働条件について交渉するための権利を保障し、労働組合の組織化と活動を法的に保護する法律である。日本国憲法第28条に規定された労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を具体化した法律として、労働基準法労働関係調整法と並んで労働三法の一つを構成している。1945年(昭和20年)12月に制定され、その後の社会経済状況の変化に応じて複数回の改正が行われてきた。本法は労働組合の定義、使用者の不当労働行為の禁止、労働委員会制度などを定め、労働者の団体的な権利行使を制度的に支える役割を果たしている。

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概要

労働組合法(昭和24年法律第174号)は、労働者が使用者との交渉において対等な立場に立つことを促進することにより、労働者の地位の向上を図ることを目的とする法律である。本法は第1条において「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすることを助成すること」を目的として明記している[1]

労働組合法は単に労働組合の結成と活動の自由を宣言するにとどまらず、労働組合が法の保護を受けるための要件を定め、使用者による不当労働行為を禁止し、これに対する救済制度を設けている点に特色がある。また、労働委員会という独立した行政機関を通じて、労使間の紛争調整と不当労働行為の審査を行う仕組みを備えており、司法救済とは別の迅速で専門的な救済手続きを提供している。

本法の適用対象となる労働者は、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者と定義されており(第3条)、正社員だけでなく、契約社員アルバイトなど多様な雇用形態の労働者を包含している。ただし、業務委託契約で働く者や個人事業主は原則として対象外となる。

法律の成立と歴史的背景

戦前の労働運動規制

明治時代から戦前の日本においては、労働組合の結成や労働運動は厳しく制限されていた。1900年(明治33年)に制定された治安警察法第17条は労働者の団結権と争議権を事実上否定し、労働運動を取り締まる根拠となっていた。このため日本では欧米諸国に比べて労働組合の発展が大きく遅れることになった。

戦前にも労働組合法案は複数回提出されたが、いずれも成立には至らなかった。1920年代には原敬内閣や加藤高明内閣下で労働組合法案が検討されたものの、企業側の強い反対や政治的対立により廃案となった経緯がある。

戦後の民主化と労働組合法の制定

第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領政策の一環として、日本の民主化が進められた。1945年(昭和20年)10月、GHQは「日本の統治体制の民主主義化」を指示し、その中で労働組合の結成奨励が明示された。

これを受けて同年12月、議会は労働組合法(旧法)を可決成立させた。これは日本で初めて労働三権を法的に保障する画期的な立法であった。旧法は労働組合の結成を促進し、労働協約の締結を助成することを目的としていたが、不当労働行為制度や労働委員会制度については十分に整備されていなかった。

1949年の全面改正

1949年(昭和24年)、労働組合法は全面的に改正された(現行法)。この改正は公共部門の労働者の争議権制限などを含む一連の労働法制の再編成の一部として行われた。改正の主な内容は、不当労働行為制度の導入と明確化、労働委員会制度の整備、労働組合の資格要件の厳格化などであった。

この改正により、使用者による組合活動への不当な介入や組合員に対する不利益取扱いが明示的に禁止され、これに対する救済手続きが確立された。現行の労働組合法はこの1949年改正法を基礎としている。

その後の主な改正

労働組合法は制定後も社会経済状況の変化に応じて何度か改正されている。1952年には労働委員会の構成と権限に関する改正が行われた。また2004年には、労働組合の組織率低下や労使関係の個別化に対応するため、労働委員会の機能強化と手続きの迅速化を図る改正が実施された。

2021年の改正では、労働委員会の命令の実効性確保のため、命令不履行に対する過料の上限額が引き上げられるなど、制度の実効性向上が図られている。

労働組合の定義と要件

労働組合の定義

労働組合法第2条は、労働組合を「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」と定義している[2]

この定義から、法が保護する労働組合として認められるためには、以下の要件を満たす必要がある。第一に、構成員が労働者であること。第二に、労働者が自主的に組織した団体であること。第三に、労働条件の維持改善など経済的地位の向上を主たる目的とすること。第四に、団体としての組織性を有することである。

自主性の要件

労働組合が法の保護を受けるためには、使用者からの独立性、すなわち自主性が不可欠である。労働組合法第2条但書は、以下のような団体を労働組合とは認めない旨を規定している。

第一に、使用者の利益を代表する者の参加を許すもの。これは管理職など使用者側の利益を代表する立場にある者が組合員となっている場合を指す。第二に、使用者から経理上の援助を受けるもの。ただし、労働者が労働時間中に時間または賃金を失うことなく使用者と協議・交渉することを使用者が許すことや、最小限の広さの事務所の供与は例外的に許される。第三に、共済事業その他福利事業のみを目的とするもの。第四に、主として政治運動または社会運動を目的とするものである。

これらの排除要件は、労働組合が使用者から独立した労働者の自主的な団体であることを確保するために設けられている。

労働組合の法人格

労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することにより、法人となることができる(第11条)。法人格を取得した労働組合は、団体として財産を所有し、契約を締結し、訴訟を提起することが可能になる。

ただし、法人格の取得は任意であり、法人格を有しない労働組合も多数存在する。法人格の有無にかかわらず、労働組合としての基本的な権利保護は及ぶが、法人格を有する場合には対外的な法律関係がより明確になるという利点がある。

労働三権の保障

団結権

団結権とは、労働者が労働組合を結成し、これに加入する権利である。日本国憲法第28条はこの権利を基本的人権の一つとして保障しており、労働組合法はこれを具体化している。

使用者は労働者の団結権を侵害することが禁止されており、労働者が労働組合を結成したこと、労働組合に加入したこと、労働組合の正当な活動を行ったことを理由として、労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすることは不当労働行為として禁止されている(第7条第1号)。

団体交渉権

団体交渉権とは、労働組合が使用者と労働条件その他の事項について交渉する権利である。使用者は労働組合からの団体交渉の申し入れに対して、正当な理由なくこれを拒否することができない(第7条第2号)。

団体交渉は個々の労働者ではなく、労働組合という団体が使用者と対等な立場で交渉することにより、労働者の交渉力を高めることを目的としている。交渉の対象は賃金、労働時間などの労働条件だけでなく、人事、経営に関する事項など幅広い事項に及ぶことがある。

団体交渉を通じて労使が合意に達した場合、その内容は労働協約として書面化される。労働協約は個別の労働契約に優先する効力を持ち、協約の基準に達しない労働条件を定めた労働契約部分は無効となり、協約の基準が適用される(第16条)。

団体行動権(争議権)

団体行動権とは、労働組合が団体交渉を有利に進めるために、ストライキその他の争議行為を行う権利である。憲法第28条はこの権利も保障しており、正当な争議行為については刑事免責と民事免責が与えられる。

刑事免責とは、正当な争議行為について刑事責任を問われないことを意味する(第1条第2項)。民事免責とは、正当な争議行為によって使用者に損害が生じても、労働組合や労働者が損害賠償責任を負わないことを意味する(第8条)。

ただし、すべての争議行為が保護されるわけではなく、正当性の範囲を逸脱した暴力行為や、著しく社会通念に反する態様の争議行為については免責が認められない場合がある。

不当労働行為制度

不当労働行為の類型

労働組合法第7条は、使用者が行ってはならない不当労働行為を列挙している。これは使用者の行為を事前に規制し、労働組合の活動を実効的に保護するための制度である。

不利益取扱い(第1号)は、労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由として、その労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすることを禁止している。不利益取扱いには、解雇のほか、降格、減給、配転、出向、昇給停止などが含まれる。

また、労働者が労働組合に加入せず、もしくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること(黄犬契約)も禁止されている。

団体交渉拒否(第2号)は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むことを禁止している。使用者には誠実交渉義務があり、形式的に交渉の場に臨むだけでなく、組合の要求や主張に対して真摯に対応し、理由を説明して自己の主張を相手方が理解できるよう努力する義務がある。

支配介入(第3号)は、使用者が労働組合の結成や運営を支配し、または介入することを禁止している。具体的には、組合活動への妨害、組合の分裂工作、特定の組合に対する優遇・差別などが該当する。また、労働組合の運営のための経費の支払いにつき経理上の援助を与えることも原則として禁止されている。

報復的不利益取扱い(第4号)は、労働者が労働委員会に対して不当労働行為の申し立てをしたこと、労働委員会の調査・審問において証拠を提示したり発言したことを理由として、その労働者を解雇したり、その他の不利益な取扱いをすることを禁止している。

救済手続き

不当労働行為があったと考える労働組合または労働者は、都道府県労働委員会(または中央労働委員会)に対して救済申立てを行うことができる(第27条)。労働委員会は、公益委員、労働者委員、使用者委員の三者で構成される独立した行政委員会であり、労使紛争の調整と不当労働行為の審査を専門的に扱う機関である。

労働委員会は申立てを受けると、調査および審問を行い、不当労働行為が成立すると認めた場合には、使用者に対して救済命令を発する。救済命令の内容には、不当労働行為の中止、原状回復、謝罪文の掲示、バックペイ(未払賃金の支払い)などが含まれる。

使用者または申立人が救済命令に不服がある場合、中央労働委員会に対して再審査を申し立てることができる。さらに、中央労働委員会の命令に対しても不服がある場合には、裁判所に行政訴訟を提起することが可能である。

労働委員会制度は、司法手続きに比べて迅速で専門的な判断が期待でき、また費用も低廉であることから、労働組合にとって利用しやすい救済制度となっている。

労働委員会制度

労働委員会の構成と種類

労働委員会は、中央労働委員会と都道府県労働委員会の二層構造となっている。中央労働委員会は厚生労働省に設置され、都道府県労働委員会は各都道府県に設置されている(第19条)。

労働委員会は、使用者を代表する者、労働者を代表する者および公益を代表する者の各同数をもって組織される(第19条の2)。この三者構成は、労使双方の意見を反映しつつ、公益的観点から公正な判断を行うための仕組みである。

中央労働委員会の委員は15名で、公益委員5名、労働者委員5名、使用者委員5名で構成される。都道府県労働委員会の委員数は条例で定められるが、通常は9名から15名程度である。公益委員は、中央労働委員会では両議院の同意を得て厚生労働大臣が任命し、都道府県労働委員会では都道府県知事が任命する。

労働委員会の権限

労働委員会の権限は大きく二つに分けられる。第一は、労働争議の調整(あっせん、調停、仲裁)である。これは労働関係調整法に基づく機能である。

第二は、不当労働行為事件の審査である。これは労働組合法に基づく機能であり、不当労働行為の申立てを受けて調査・審問を行い、救済命令または棄却命令を発する権限を持つ。

労働委員会は、審査に必要な証拠調べを行う権限を有しており、当事者や証人に出頭を求めて尋問したり、文書の提出を命じることができる。また、緊急命令を発する権限も与えられており、審査中に必要があると認めるときは、使用者に対して暫定的な措置を命じることができる(第27条の12)。

命令の効力と履行確保

労働委員会の救済命令が確定した場合、使用者はこれに従う法的義務を負う。命令に従わない場合、申立人は裁判所に対して命令の履行を求める訴訟を提起することができる。

また、確定した命令に違反した者には、50万円以下の過料が科される(第32条)。2021年の法改正により、この過料の上限額は従来の10万円から50万円に引き上げられ、命令の実効性が強化された。

労働協約

労働協約の意義

労働協約とは、労働組合と使用者またはその団体との間で、労働条件その他に関する事項について合意した内容を書面に作成し、両当事者が署名または記名押印したものをいう(第14条)。労働協約は、個別の労働契約とは異なり、集団的な労使関係を規律する規範である。

労働協約には、賃金、労働時間、休日、安全衛生などの労働条件に関する事項(規範的部分)のほか、組合活動に関する事項、平和条項(協約期間中は争議行為を行わない旨の約束)、労使協議に関する事項など多様な内容が含まれる。

労働協約の効力

労働協約のうち、労働条件その他の労働者の待遇に関する基準を定める部分(規範的部分)については、これに反する労働契約の部分を無効とし、無効となった部分および労働契約に定めがない部分は労働協約の基準によるという強い効力(規範的効力)が認められている(第16条)。

この規範的効力により、労働協約は個別の労働契約に優先し、協約の基準を下回る労働条件を定めた労働契約は、その部分について自動的に協約の基準まで引き上げられる。これにより、労働組合は組合員の労働条件を集団的に改善することができる。

一般的拘束力

労働組合法第17条は、一つの工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上が一つの労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されると規定している(一般的拘束力)。

この制度により、多数の労働者に適用される労働協約の基準が、非組合員を含む同種の労働者全体に拡張適用される。これは労働条件の統一を図り、組合員と非組合員の間の不公平を防止するための制度である。

また、厚生労働大臣または都道府県知事は、一定の地域において従業する同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けるに至った場合、労働委員会の決議に基づき、当該労働協約を地域内の他の同種の労働者および使用者にも適用することができる(地域的拡張適用、第18条)。

労働組合法と雇用形態

正社員と労働組合

正社員は労働組合法における典型的な労働者であり、多くの企業別労働組合は主として正社員を組合員として組織されている。正社員は雇用が比較的安定しており、企業内でのキャリア形成を前提としているため、企業別組合への加入率が高い傾向にある。

ただし、近年は正社員の組合組織率も低下傾向にあり、特に若年層や中小企業において組合離れが進んでいるとされる。企業別組合は、正社員の雇用保障や労働条件改善において一定の役割を果たしてきたが、非正規労働者の増加や雇用の多様化に対応した組織化が課題となっている。

契約社員・アルバイトと労働組合

契約社員アルバイトなどの有期雇用労働者も、労働組合法上の労働者に該当し、労働組合を結成し、または既存の労働組合に加入する権利を有する。有期雇用労働者が労働組合活動を行ったことを理由として、雇止めや不利益取扱いを受けた場合、不当労働行為として救済を申し立てることができる。

しかし実際には、有期雇用労働者は雇用が不安定であり、組合活動を行うことで次回の契約更新に影響が出ることを懸念して、組合加入を躊躇する傾向がある。また、企業別組合の多くは正社員を中心に組織されており、非正規労働者の組織化が十分に進んでいないという現状がある。

近年、パートタイム労働者や契約社員など非正規労働者の労働条件改善を目的とした労働組合(コミュニティ・ユニオンなど)も活動しており、これらの組合を通じた権利保護の動きも見られる。

業務委託と労働組合法の適用

業務委託契約で働く者は、原則として労働組合法上の労働者には該当しない。労働組合法第3条は労働者を「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義しているが、業務委託契約は雇用契約とは異なり、委託者と受託者の間に指揮命令関係がなく、対等な事業者間の契約と位置づけられるためである。

ただし、契約形式が業務委託であっても、実態として使用従属関係が認められる場合には、労働組合法上の労働者性が認められることがある。判例では、仕事の依頼に対する諾否の自由の有無、業務遂行における指揮監督の有無、報酬の労務対償性、事業者性の程度などを総合的に考慮して労働者性を判断している。

近年、フリーランスやギグワーカーなど業務委託形態で働く者が増加しており、これらの労働者の保護が課題となっている。2023年にはフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立し、一定の保護が図られたが、労働組合法の適用対象とはなっていない。

関連法令との関係

労働基準法との関係

労働基準法は、個々の労働者の労働条件の最低基準を定める法律であり、労働時間、休日、賃金などについて具体的な基準を設けている。これに対して労働組合法は、労働者の集団的な権利行使を保障する法律であり、両者は労働者保護という共通の目的を持ちながらも、保護の手法が異なる。

労働基準法は使用者に対して直接的な義務を課し、違反には罰則が設けられているのに対し、労働組合法は労働組合という団体を通じた自主的な労働条件決定を支援する仕組みである。労働協約によって労働基準法の基準を上回る労働条件を定めることは可能であるが、下回ることは許されない。

36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)は、労働基準法第36条に基づき、使用者と労働組合(または労働者の過半数代表者)との間で締結されるものであり、両法の接点の一例である。

労働契約法との関係

労働契約法は、2007年に制定された法律であり、個別の労働契約における労使の権利義務関係を規定している。同法は労働契約の成立、変更、終了などについて民事的なルールを定めており、労働者個人と使用者の関係を規律する。

労働組合法が集団的労使関係を規律するのに対し、労働契約法は個別的労使関係を規律する。ただし、労働協約によって定められた労働条件は労働契約の内容となるため(労働組合法第16条)、集団的労使関係と個別的労使関係は密接に関連している。

また、労働契約法第16条は解雇権濫用法理を規定しているが、労働組合活動を理由とする解雇は不当労働行為(労働組合法第7条第1号)として別途規制されている。

労働関係調整法との関係

労働関係調整法は、労働争議の予防と解決を目的とする法律である。同法は労働争議の定義、調整手続き(あっせん、調停、仲裁)、緊急調整などについて定めており、労働委員会はこの法律に基づく労働争議の調整も行う。

労働組合法が労働組合の権利保護と不当労働行為の救済を主眼とするのに対し、労働関係調整法は労使の紛争解決手続きを定めている。両法は労働委員会という共通の機関を通じて運用されており、労働三法として一体的に機能している。

職業安定法との関係

職業安定法は、職業紹介、労働者供給、労働者募集などについて規制する法律である。労働組合が行う労働者供給事業(いわゆる労務供給事業)については、一定の要件の下で職業安定法の適用除外となっており(同法第45条)、労働組合の機能として認められている。

かつて日本では港湾労働などにおいて労働組合による労働者供給事業が広く行われていたが、現在ではその規模は縮小している。ただし、建設業や港湾運送業などでは引き続き労働組合が労働者供給事業を行っている例がある。

労働組合の現状

組織率の推移

日本の労働組合の推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は、1949年の労働組合法全面改正当時は約55%であったが、その後長期的に低下傾向にある。厚生労働省の調査によれば、2024年の推定組織率は16.3%となっており、過去最低を更新している[3]

組織率低下の要因としては、産業構造の変化(製造業の縮小とサービス業の拡大)、非正規労働者の増加、企業規模の小規模化、労働者の価値観の変化などが指摘されている。特に中小企業や非正規労働者の組織化が進んでいないことが大きな課題となっている。

企業別組合の特徴

日本の労働組合の大部分は企業別組合であり、企業単位で組織されている点に特徴がある。これは欧米の産業別組合や職業別組合とは異なる形態である。企業別組合は、企業への帰属意識が強い日本の雇用慣行と親和性が高く、企業内での労使協調を重視する傾向がある。

企業別組合は企業の経営状況を踏まえた現実的な交渉を行いやすい反面、企業を超えた労働者の連帯が弱く、産業全体や労働市場全体での労働条件の底上げが困難であるという課題も指摘されている。

産業別組織と連合

企業別組合の上部団体として、産業別労働組合組織(産別)が存在する。産別は同一産業または関連産業の企業別組合が加盟する連合体であり、産業レベルでの政策要求や統一的な労働条件闘争を行う。

さらに、産別の上部団体として、日本労働組合総連合会(連合)が1989年に結成された。連合は日本最大のナショナルセンター(全国中央組織)であり、約680万人の組合員を擁している。連合は労働政策や社会政策に関する提言を行い、政治活動や国際労働運動にも関与している。

連合以外にも、全国労働組合総連合(全労連)、全国労働組合連絡協議会(全労協)などのナショナルセンターが存在し、それぞれ異なる理念や活動方針を持っている。

コミュニティ・ユニオンと合同労組

近年、企業別組合とは異なる形態の労働組合として、コミュニティ・ユニオンや合同労組が注目されている。これらは地域や産業を基盤として個人加盟で組織される労働組合であり、企業に労働組合がない労働者、非正規労働者、中小企業労働者などを対象としている。

コミュニティ・ユニオンは、個別の労働紛争に対する支援や団体交渉を通じて、組織労働者以外の労働者の権利保護に取り組んでいる。その活動は解雇や雇止め、未払賃金、パワーハラスメントなど多岐にわたり、労働相談から団体交渉、労働委員会への申立てまで一貫した支援を提供している。

特定業界における労働組合

風俗産業と労働組合法の適用

風俗産業において働く従業員も、雇用関係にある限り労働組合法上の労働者に該当する。デリヘルソープランドファッションヘルスなどの性風俗関連特殊営業の店舗で雇用される従業員(受付、ドライバー、店舗管理者など)は、賃金を得て労務を提供している労働者である。

ただし、実際には風俗業界における労働組合の組織率は極めて低く、労働組合が存在する事例はほとんど報告されていない。これは業界の特性上、従業員の流動性が高いこと、雇用形態が不明確な場合が多いこと、労働組合活動を公にすることへの心理的抵抗があることなどが理由と考えられる。

風俗業界で働く従業員が労働条件について問題を抱えた場合、個別にコミュニティ・ユニオンなどに相談するケースがある。また、労働基準監督署への相談や申告も可能である。

キャバクラ・ホストクラブ等の接待飲食店

キャバクラホストクラブクラブなどの接待飲食等営業で働く従業員についても、雇用契約に基づいて働いている場合には労働組合法の適用対象となる。

これらの業態では、ホステスやホストといったキャストが個人事業主として業務委託契約を結んでいるケースも多いが、実態として店舗からの指揮命令を受け、報酬が時間給や歩合給として支払われている場合には、労働者性が認められる可能性がある。

近年、ホストクラブにおける売掛金問題や労働条件をめぐるトラブルが社会問題化しており、一部では労働組合を通じた交渉や労働委員会への申立ても行われている。コンセプトカフェガールズバーなどでも同様の問題が指摘されている。

芸能・エンターテインメント業界

俳優、声優、芸能人などの芸能従事者の労働者性については、個別の契約形態や実態に応じて判断される。多くの芸能人はプロダクションとマネジメント契約を結んでおり、業務委託契約に近い形態であるため、労働組合法上の労働者とは認められないケースが多い。

しかし、劇団員やテーマパークの出演者など、特定の使用者の指揮命令下で継続的に労務を提供している場合には、労働者性が認められる可能性がある。実際に、一部の劇団では労働組合が結成され、労働条件改善のための活動が行われている。

また、芸能人の労働環境改善を目的とした任意団体や業界団体も存在し、契約の適正化や最低報酬基準の設定などに取り組んでいる。

国際比較

欧米諸国の労働組合制度

欧米諸国の労働組合は、日本の企業別組合とは異なり、産業別組合や職業別組合が中心である。これらの組合は企業の枠を超えて組織されており、産業レベルや全国レベルでの労働協約締結が一般的である。

ドイツでは産業別組合が強い影響力を持ち、産業別労働協約が締結される。また、企業レベルでは従業員代表制度(事業所委員会)が設けられており、労働組合とは別に従業員の経営参加が制度化されている。

イギリスでは職業別組合が伝統的に強かったが、1980年代以降のサッチャー政権下での労働組合改革により、組合の影響力は大きく低下した。現在でも労働組合は存在するが、組織率は低下傾向にある。

アメリカでは産業別組合と職業別組合が混在しており、労働協約の締結単位も多様である。アメリカの労働法制は日本とは大きく異なり、全国労働関係法(ワグナー法)に基づく排他的交渉代表制度が特徴的である。

国際労働機関(ILO)と労働組合

国際労働機関(ILO)は、労働条件の改善と社会正義の実現を目的とする国連の専門機関である。ILOは多数の条約と勧告を採択しており、その中には結社の自由と団結権の保護に関する第87号条約(1948年)、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する第98号条約(1949年)など、労働組合に関する基本的な条約が含まれている。

日本はILO第87号条約および第98号条約を批准しており、これらの条約の原則は労働組合法の基礎となっている。ILOの監視機関は、各国の労働法制が条約の原則に適合しているかを審査しており、日本の労働組合制度についても複数回にわたり勧告や指摘が行われている。

関連分野の基礎知識

労働三権の憲法上の位置づけ

日本国憲法第28条は「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と規定している。この規定により、労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)が憲法上の基本的人権として保障されている。

憲法第28条の保障は、国家に対して労働三権を侵害しないよう求めるだけでなく(自由権的側面)、労働三権を実効的に保障するための法制度を整備するよう求める(社会権的側面)という二つの側面を持つ。労働組合法は、この憲法上の要請を具体化する法律として位置づけられる。

公務員の労働基本権制限

公務員については、その職務の公共性から労働基本権に一定の制限が設けられている。国家公務員法および地方公務員法は、公務員の争議行為を禁止しており、違反した場合には懲戒処分の対象となる。

この制限の合憲性については議論があり、最高裁判所は公務員の労働基本権制限を合憲としつつも、代償措置(人事院勧告制度など)の整備が必要であるとしている。現在、警察職員と消防職員を除く一般職公務員には団結権と団体交渉権が認められているが、争議権は認められていない。

労働協約と就業規則の関係

就業規則は、使用者が一方的に作成する職場の規律や労働条件を定めた規則である。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を義務づけている。

労働協約と就業規則の関係については、労働協約が優先する。労働組合法第16条の規範的効力により、労働協約で定められた基準に反する就業規則の規定は無効となり、労働協約の基準が適用される。ただし、労働協約の適用を受けない労働者(非組合員など)については、就業規則が適用される。

また、就業規則の作成・変更に際しては、労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合は労働者の過半数代表者)の意見を聴くことが義務づけられている(労働基準法第90条)。

労働委員会と裁判所の役割分担

労働組合をめぐる紛争については、労働委員会による行政的救済と、裁判所による司法的救済の二つの制度が併存している。労働委員会は専門的・迅速な判断と労使関係の調整を重視するのに対し、裁判所は法的権利義務の最終的な確定を行う。

不当労働行為事件については、労働委員会への申立てと民事訴訟の提起は択一的ではなく、両方を並行して行うことも可能である。ただし、労働委員会の救済命令は行政処分であり、これに対する不服は行政訴訟によって争われる。

労働委員会制度は、労使関係の特性を踏まえた専門的判断と迅速な救済を可能にする点で、裁判所とは異なる意義を持っている。

社会保険と労働組合

社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)の適用は、労働組合の有無とは直接関係しないが、労働組合は組合員の社会保険加入促進や保険料負担のあり方について使用者と交渉することができる。

特に、パートタイム労働者や短時間労働者の社会保険適用拡大については、労働組合が重要な役割を果たしてきた。労働協約において社会保険の適用基準や事業主負担割合について定めることも可能である。

また、労働組合自身が健康保険組合を設立・運営している例もあり、組合健保として独自の付加給付を提供している場合もある。

法律名制定年主な目的主な内容
労働基準法1947年労働条件の最低基準の設定労働時間、休日、賃金、年少者保護、労働災害補償など
労働組合法1945年(1949年全面改正)労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権の保障労働組合の定義、不当労働行為の禁止、労働委員会制度、労働協約など
労働関係調整法1946年労働争議の予防と解決労働争議の定義、調整手続き(あっせん、調停、仲裁)、緊急調整など
類型条文禁止される行為具体例
不利益取扱い第7条第1号組合員であること等を理由とする解雇その他の不利益取扱い、黄犬契約組合加入を理由とする解雇、降格、減給、配転、昇給差別など
団体交渉拒否第7条第2号正当な理由のない団体交渉の拒否交渉申入れの無視、形式的な対応、誠実交渉義務違反など
支配介入第7条第3号労働組合の結成・運営に対する支配介入、経理上の援助組合活動への妨害、御用組合の育成、組合の分裂工作など
報復的不利益取扱い第7条第4号労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱い不当労働行為の申立てを理由とする解雇、嫌がらせなど

脚注・注釈・出典

  1. 労働組合法第1条(昭和24年法律第174号)
  2. 労働組合法第2条(昭和24年法律第174号)
  3. 厚生労働省「令和6年労働組合基礎調査の概況」(2024年12月)

関連項目

外部リンク

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