職業安定法(しょくぎょうあんていほう、昭和22年法律第141号)は、1947年(昭和22年)に制定された日本の労働市場における基本法の一つであり、職業紹介事業、労働者の募集、労働者供給事業などの適正な運営を定めている。通称「職安法」とも呼ばれる。
本法の目的は、労働者が各自の能力に適した職業に就く機会を平等に与えることにより、労働力の需給調整を適正かつ円滑に行い、もって経済及び社会の発展に寄与することである。公共職業安定所(ハローワーク)を中心とした無料の職業紹介体制を整備し、民間の職業紹介事業者に対しては許可制・届出制を採用して規制を行っている。
2022年10月および2024年4月、2025年4月と段階的に改正が施行され、求人情報の的確な表示義務の強化、募集情報等提供事業者への規制強化、就職お祝い金の提供禁止など、求職者保護と労働市場の透明性向上を目指した制度改革が進められている。2026年4月には職業紹介責任者の専任要件の緩和も予定されており、事業者の実務運営に柔軟性が加わる見込みである。
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概要
職業安定法は、労働者の職業選択の自由を保障し、労働力の適正配置を図るため、職業紹介、労働者募集、労働者供給の各事業に関して基本的なルールを定めた法律である。日本国憲法第22条の「職業選択の自由」と第27条の「勤労の権利」を具体化する法制度の一翼を担っている。
本法は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法、旧称:雇用対策法)と相まって、国が公共職業安定所を設置し、無料の職業紹介事業を実施するとともに、民間の職業紹介事業や募集情報提供事業を適正に規制することで、求職者と求人者双方の利益を保護している。
職業安定法は全68条から構成され、主に以下の事項を規定している。
- 公共職業安定所の設置と運営(第8条~第16条)
- 職業紹介事業の許可・届出および運営基準(第30条~第43条)
- 労働者募集の規制(第36条~第42条)
- 募集情報等提供事業の届出(第43条の2)
- 労働者供給事業の規制(第44条~第46条)
- 求人・求職情報の的確な表示義務(第5条の3、第5条の4)
- 違反に対する罰則(第64条~第67条)
法律の目的と基本理念
職業安定法第1条は、本法の目的を次のように定めている。
この法律は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)と相まつて、公共に奉仕する公共職業安定所その他の職業安定機関が関係行政庁又は関係団体の協力を得て職業紹介事業等を行うこと、職業安定機関以外の者の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正な調整に果たすべき役割にかんがみその適正な運営を確保すること等により、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もつて職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
つまり、職業安定法は以下の基本理念に基づいて制定されている。
- 職業選択の自由の保障:求職者が自らの能力や希望に応じて、自由に職業を選択できる機会を提供する。
- 労働力需給の適正調整:労働市場における需要(求人)と供給(求職)のミスマッチを解消し、円滑な労働移動を促進する。
- 公共職業安定所の無料職業紹介:国が設置するハローワークにおいて、無料で職業紹介を行うことにより、セーフティネットを構築する。
- 民間職業紹介事業の適正化:民間事業者の職業紹介・労働者募集・募集情報提供事業を規制し、求職者の保護と市場の健全化を図る。
- 経済及び社会の発展への寄与:適材適所の労働配置を促進し、産業の発展と社会全体の経済成長に貢献する。
また、職業安定法第3条では、何人も人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について差別的取扱いを受けないことを明記しており、機会均等の原則を強く打ち出している。
参考資料:
歴史的背景と制定経緯
職業安定法は、第二次世界大戦後の連合国軍占領下において、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指導のもとで制定された法律である。
戦前の職業紹介法
職業安定法の前身は、1921年(大正10年)に制定された職業紹介法(大正10年法律第39号)である。同法は、第一次世界大戦後の失業問題に対応するため、国が職業紹介機関を設置し、労働者の職業あっせんを行うことを目的としていた。しかし、戦前の職業紹介法は、公的機関の整備が不十分であり、また戦時統制経済下においては十分に機能しなかった。
GHQの労働民主化政策
終戦後、GHQは日本の労働制度全体を民主化する方針を打ち出し、労働三法(労働組合法、労働関係調整法、労働基準法)の整備を進めた。これと並行して、労働市場の適正化を図る法制度として、職業紹介法を全面的に改正し、職業安定法を制定することとなった。
1947年の職業安定法制定
1947年(昭和22年)11月30日、職業安定法(昭和22年法律第141号)が公布・施行された。同年9月には労働省(現・厚生労働省)が新設され、職業安定行政の中核機関として公共職業安定所(通称:職安、現在のハローワーク)が全国各地に設置された。
職業安定法の制定により、以下の制度が確立された。
- 公共職業安定所による無料職業紹介の実施
- 民間職業紹介事業の許可制導入
- 労働者供給事業の原則禁止(労働組合等によるものを除く)
- 職業紹介における機会均等原則の明記
1947年制定時の職業安定法は、憲法の理念に基づき、すべての国民に対して職業選択の自由と職業紹介を受ける権利を保障することを明確にした点で画期的な意義を持つ。
参考資料:
職業安定法の対象事業
職業安定法は、以下の4つの事業形態を対象として規制している。
職業紹介事業
職業紹介とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることをいう(職業安定法第4条第1項)。
職業紹介事業は、その運営形態により以下の2種類に分類される。
有料職業紹介事業
有料職業紹介事業を行うには、事業所ごとに厚生労働大臣の許可を受ける必要がある(第30条第1項)。許可の有効期間は5年間であり、更新手続きが必要である(第32条の2)。
有料職業紹介事業者は、一定の手数料を徴収することができるが、その範囲や上限は法令で厳格に定められている。
無料職業紹介事業
無料職業紹介事業は、営利を目的としない団体(学校、商工会議所、特別の法人など)が行う場合に認められる。無料職業紹介事業を行う場合も、厚生労働大臣への届出が必要である(第33条)。
参考資料:
労働者の募集
労働者募集とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して労働者の募集を行うことをいう(第4条第4項)。
労働者の募集を行う場合、募集を行う者(求人者)は、労働条件を明示する義務があり、虚偽の広告や誤解を生じさせる表示をしてはならない(第5条の3、第42条)。
また、求人者は、募集に関する情報を適正に表示し、求職者が正確な情報に基づいて職業選択を行えるようにする責任を負う。
募集情報等提供事業
募集情報等提供事業とは、労働者の募集を行う者又は募集受託者の依頼を受け、当該募集に関する情報を労働者となろうとする者に提供する事業をいう(第4条第6項)。
求人サイトや求人情報誌を運営する事業者が、この募集情報等提供事業者に該当する。
2022年の職業安定法改正により、募集情報等提供事業者に対しても、求人情報の的確な表示義務や苦情処理体制の整備義務が課されることとなった。
さらに、労働者になろうとする者に関する情報を収集して募集情報等提供を行う事業者(特定募集情報等提供事業者)は、事業開始前に厚生労働大臣への届出が義務付けられている(第43条の2第1項)。
参考資料:
労働者供給事業
労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣に該当するものを含まない(第4条第8項)。
労働者供給事業は、原則として禁止されている(第44条)。ただし、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合に限り、例外的に認められる。
労働者供給事業の禁止は、戦前に横行した労働者の中間搾取や強制労働を防止するための規制である。なお、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業は、職業安定法の労働者供給には該当しない。
参考資料:
公共職業安定所(ハローワーク)の役割
公共職業安定所(通称:ハローワーク)は、職業安定法第8条の規定に基づき、厚生労働省が設置・運営する国の行政機関である。2024年4月時点で、全国に本所および出張所を合わせて544カ所が設置されている。
ハローワークの3つの役割
ハローワークは、以下の3つの役割を担っている。
- 職業紹介事業
求職者に対して、無料で職業紹介を行う。求人情報の提供、職業相談、職業指導、職業適性検査の実施など、求職者の就職活動を総合的に支援する。 - 雇用保険事業・求職者支援事業
雇用保険の被保険者資格の取得・喪失手続き、失業等給付の支給、教育訓練給付の手続きなど、雇用保険に関する事務を一手に担う。また、雇用保険を受給できない求職者に対しては、求職者支援制度により職業訓練と給付金の支給を行う。 - 雇用対策関係業務
高年齢者、障害者、生活保護受給者、母子家庭の母、若年者など、就職が困難な者に対する重点的な支援を実施する。また、企業に対する雇用関係助成金の相談・申請受付、雇用調整助成金の支給、事業主指導なども行う。
ハローワークは、憲法第27条で保障される「勤労権」を具現化する国のセーフティネットとして位置づけられている。民間の職業紹介事業では対応が難しい就職困難者に対しても、公共サービスとして平等に職業紹介を提供する点に、ハローワークの存在意義がある。
参考資料:
- 厚生労働省:ハローワーク(公共職業安定所)
- 厚生労働省:公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績(PDF)
- リクルートワークス研究所:Works University 労働政策講義2024 11公共職業安定所(PDF)
- 労働政策研究・研修機構:ハローワーク(公共職業安定所)の役割は何か(PDF)
有料職業紹介事業の許可要件
有料職業紹介事業を行うには、職業安定法第30条第1項に基づき、事業所ごとに厚生労働大臣の許可を受けなければならない。許可の有効期間は5年間であり、期間満了後も事業を継続する場合は、更新手続きが必要である。
許可の主要要件(概要)
有料職業紹介事業の許可を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要がある。
1. 事業主の適格性
- 事業主(法人の場合は役員を含む)が欠格事由に該当しないこと
- 成年被後見人、被保佐人でないこと
- 職業安定法、労働基準法、労働者派遣法などの労働関係法令に違反して刑に処せられ、その執行を終わった日から5年を経過していない者でないこと
- 暴力団員等に該当しない者であること
2. 財産的基礎
- 基準資産額が500万円以上であること(事業所が複数ある場合は追加要件あり)
- 事業を的確に遂行するに足りる財産的基礎を有すること
3. 事業所の設備
- 事業所の面積が原則として20平方メートル以上であること
- 個室の設置またはパーテーション等により、プライバシー保護が可能な構造であること
4. 職業紹介責任者の選任
- 事業所ごとに1名以上の職業紹介責任者を選任すること(後述の「職業紹介責任者の選任」参照)
5. 個人情報の適正管理
- 個人情報適正管理規程を定めていること
- 求職者等の個人情報を適正に管理するための措置が講じられていること
6. 適正な事業運営の体制
- 適正な事業運営が可能な組織体制、業務運営規程、帳簿類の整備がなされていること
参考資料:
- 厚生労働省:有料職業紹介事業 許可要件(概要)(PDF)
- 大阪労働局:有料職業紹介事業の許可
- 上野綜合法律事務所:【2025年最新】職業安定法の職業紹介とは?許可要件から手数料まで解説
- Money Forward Biz:【2025年改定】有料職業紹介の許認可ガイド!要件や費用など紹介
職業紹介責任者の選任
職業紹介事業を行う事業所には、職業紹介に関する業務を統括する職業紹介責任者を選任し、配置しなければならない(職業安定法第32条の14)。
選任の要件
職業紹介責任者になるためには、以下の要件をすべて満たす必要がある。
- 成年に達した後3年以上の職業経験を有する者であること
- 厚生労働大臣が定める職業紹介責任者講習を受講していること(許可申請前5年以内、更新の場合は許可の有効期間内)
- 欠格事由に該当しない者であること(法第32条の3第2項に規定)
- 労働関係法令に関する知識及び職業紹介事業に関連する経験を有する者であること
選任の人数
- 事業所ごとに1名以上の職業紹介責任者を選任する
- 職業紹介従事者が50名を超える場合は、50名ごとに1名を加えた数以上の職業紹介責任者を選任する
職業紹介責任者講習
職業紹介責任者講習は、厚生労働大臣が指定する講習実施機関(一般社団法人国際キャリア支援機構など)が実施している。講習の有効期間は受講日から5年間であり、期限前に再受講が必要である。
2026年4月改正:専任要件の緩和
2025年12月に労働政策審議会需給部会で了承された改正案により、2026年4月から、職業紹介責任者の専任要件が緩和される見込みである。従来は事業所ごとに専任の職業紹介責任者を配置する必要があったが、改正後は、一定の条件下で複数の事業所で兼任することが可能となる予定である。
参考資料:
- 厚生労働省:職業紹介事業における職業紹介責任者の専属要件の見直し(PDF)
- アドバンスニュース:新設特例で職業紹介責任者の「兼任」認める、2026年4月施行
- 一般社団法人国際キャリア支援機構:職業紹介責任者とは
- 株式会社ウェルネット:職業紹介責任者とは
手数料に関する規制
職業安定法は、有料職業紹介事業者が徴収できる手数料について、厳格な規制を設けている。
原則:求職者からの手数料徴収の禁止
職業安定法第32条の3第1項は、有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収することを原則として禁止している。これは、求職者の経済的負担を軽減し、職業選択の自由を実質的に保障するためである。
ただし、以下の職種については例外的に求職者から手数料を徴収することが認められている。
- 芸能家、家政婦、配膳人、調理師など、特定の職種(職業安定法施行規則第20条)
求人者から徴収する手数料
有料職業紹介事業者は、求人者(企業)から手数料を徴収することができる。手数料の種類と上限は以下の通りである。
1. 上限制手数料
厚生労働省令で定められた上限額の範囲内で徴収できる手数料。
- 受付手数料:求人・求職の受付1件につき710円(免税事業者は660円)
- 上限制手数料:採用された労働者の6ヶ月間の賃金総額の11.0%(免税事業者は10.3%)を上限とする
2. 届出制手数料
事前に厚生労働大臣に届け出た手数料表に基づき、その範囲内で自由に設定できる手数料。実務上、多くの有料職業紹介事業者は届出制手数料を採用しており、採用成功時の成功報酬として、採用者の理論年収の30~35%程度を手数料として徴収することが一般的である。
ただし、厚生労働省は届出制手数料の上限として、賃金の50%を超える手数料は受理しない運用を行っている。
手数料の実績公表義務
2024年4月の改正により、有料職業紹介事業者は、徴収した紹介手数料の実績を人材サービス総合サイトに掲載することが義務付けられた。これにより、求人者や求職者が手数料の相場を把握しやすくなり、市場の透明性が向上した。
参考資料:
求人情報の明示義務と虚偽表示の禁止
職業安定法は、職業紹介事業者、募集情報等提供事業者、労働者募集を行う者に対して、求人情報を的確に表示する義務を課している。
求人等に関する情報の的確な表示(第5条の3、第5条の4)
職業安定法第5条の3は、求人者、職業紹介事業者、募集情報等提供事業者に対して、求人情報に関して虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないことを定めている。
また、第5条の4は、求人者が求人の申込みに際して、労働条件等を明示する義務を規定している。
2024年4月改正:明示すべき労働条件の追加
2024年4月1日から、求人情報に明示すべき労働条件が追加された。新たに追加された明示事項は以下の通りである。
- 従事すべき業務の変更の範囲
- 就業場所の変更の範囲
- 有期労働契約を更新する場合の基準(更新回数の上限を含む)
これにより、求職者は、入社後の配置転換や業務変更、契約更新の可能性について、事前に正確な情報を得ることができるようになった。
虚偽表示の禁止と具体例
職業安定法第65条第9号・第10号は、虚偽の広告をし、または虚偽の条件を提示して職業紹介、労働者の募集を行った者に対して、6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金を科すことを定めている。
以下のような行為は虚偽表示に該当する可能性が高い。
- 実際の給与額よりも高額な給与を求人広告に記載する
- 残業がないにもかかわらず「残業あり」と表示し、残業代を含めた給与額を提示する
- 実際には試用期間があるにもかかわらず、「試用期間なし」と表示する
- 正社員募集と表示しながら、実際には契約社員としての雇用を予定している
参考資料:
- 厚生労働省:職業安定法に基づく周知|労働者の募集広告の表示について
- 厚生労働省:虚偽の表示、誤解を生じさせるような表示のある求人広告について
- パート・アルバイト求人サイト:求人掲載で守るべきルールは?
- 法令リード:職業安定法|条文
職業安定法違反の罰則
職業安定法は、法律に違反した者に対して刑事罰を科す規定を設けている。主な罰則は以下の通りである。
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第64条)
- 厚生労働大臣の許可を得ずに職業紹介事業を行った者
- 虚偽の申請により職業紹介事業の許可を受けた者
- 労働者供給事業を行った者(第44条違反)
- 職業紹介事業の停止命令に違反した者
6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第65条)
- 虚偽の広告をし、または虚偽の条件を提示して職業紹介、労働者の募集を行った者(第65条第9号・第10号)
- 求職者の個人情報を適正に管理しなかった者
- 職業紹介責任者を選任しなかった者
- 厚生労働大臣の改善命令に違反した者
30万円以下の罰金(第66条)
- 帳簿書類の備付け、記載、保存義務に違反した者
- 報告徴収、立入検査を拒否した者
両罰規定(第67条)
法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関して職業安定法違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても罰金刑を科す。
過去の違反事例
職業安定法違反で摘発された事例としては、以下のようなものがある。
- 無許可での職業紹介事業:許可を得ずに人材紹介を行い、手数料を徴収した事業者が逮捕・起訴された事例
- 虚偽の求人広告:実際には存在しない高額給与や好条件を提示して求職者を集め、契約後に条件を変更した事業者に対する是正指導・罰金
- 事業停止命令期間中の営業:許可取消または事業停止命令を受けたにもかかわらず、引き続き職業紹介事業を行った事業者に対する刑事処分
参考資料:
- 厚生労働省:労働基準関係法令違反に係る公表事案(PDF)
- IMITSU:職業安定法とは?記載内容と過去の違反事例を紹介
- オーセンス法律事務所:職業安定法とは?違反した際の罰則は?
- 上原総合法律事務所:職業安定法とは?違反すると罰則はある?
主要な改正の経緯
職業安定法は、労働市場の変化や社会的課題に対応するため、制定以来数次にわたり改正されてきた。ここでは、近年の主要な改正について解説する。
2022年(令和4年)改正
改正の背景
求人情報と実際の労働条件が異なる「求人詐欺」や「ブラック求人」が社会問題化したことを受け、求職者保護を強化する目的で改正が行われた。
主な改正内容
- 求人等に関する情報の的確な表示義務の強化(第5条の3)
職業紹介事業者、募集情報等提供事業者、労働者募集を行う者は、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないことが明文化された。 - 募集情報等提供事業の適正化
募集情報等提供事業者(求人サイト運営者)に対して、苦情処理体制の整備、個人情報の適正管理などの義務が課された。 - 特定募集情報等提供事業者の届出制(第43条の2)
労働者になろうとする者に関する情報を収集して募集情報等提供を行う事業者は、厚生労働大臣への届出が義務付けられた。
施行日
- 2022年10月1日
参考資料:
2024年(令和6年)改正
主な改正内容
- 明示すべき労働条件の追加
従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約の更新基準などが、求人情報に明示すべき労働条件として追加された。 - 手数料実績の公表義務
有料職業紹介事業者は、徴収した紹介手数料の実績を人材サービス総合サイトに掲載することが義務付けられた。
施行日
- 2024年4月1日
参考資料:
2025年(令和7年)改正
主な改正内容
- 就職お祝い金の提供禁止
募集情報等提供事業者(求人サイト運営者)が、求職者に対して就職お祝い金を提供することが原則禁止された。これにより、お祝い金目当ての求職活動を防止し、求職者が本当に自分に合った職場を選べる環境が整備された。 なお、職業紹介事業者に対しては、既に2021年4月から就職お祝い金の提供が禁止されていた。 - 職業紹介事業者の無期雇用契約者への転職勧奨禁止期間の設定
職業紹介事業者は、自らの紹介により無期雇用契約を締結した労働者に対して、就職日から2年間は転職勧奨をしてはならないこととされた。
施行日
- 2025年4月1日
参考資料:
- 契約ウォッチ:【2025年施行】就職お祝い金の禁止とは?変更点や求人メディア対応の注意点を徹底解説
- パーソルテンプスタッフ:職業安定法の2025年までの改正や企業が留意すべき点を分かりやすく解説
- 人材ニュース:【2025年1月改正】職業紹介事業者の「お祝い金・転職勧奨」を禁止
2026年(令和8年)改正予定
主な改正内容
- 職業紹介責任者の専任要件の緩和
従来、職業紹介責任者は事業所ごとに専任で配置する必要があったが、2026年4月以降は、一定の条件下で複数の事業所で兼任することが可能となる見込みである。 この改正により、特に中小規模の職業紹介事業者において、人材の有効活用と事業運営の柔軟性が向上すると期待されている。
施行日(予定)
- 2026年4月1日
参考資料:
関連法規
職業安定法は、他の労働関係法規と密接に関連しながら、労働市場の適正化を図っている。主な関連法規は以下の通りである。
労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)は、雇用対策の総合的推進、職業能力開発、労働力需給の調整などを定めている。職業安定法第1条においても、本法と相まって職業安定を図ることが明記されている。
労働者派遣法
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)は、労働者派遣事業の適正化と派遣労働者の保護を目的としている。職業安定法が原則禁止する「労働者供給事業」とは異なり、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業は適法である。
労働基準法
労働基準法(昭和22年法律第49号)は、労働条件の最低基準を定めている。職業安定法において明示すべき労働条件の多くは、労働基準法に基づく基準と連動している。
男女雇用機会均等法
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)は、募集・採用における性別による差別を禁止している。職業安定法第3条の機会均等原則とも関連する。
個人情報保護法
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)は、職業紹介事業者や募集情報等提供事業者が取り扱う求職者・求人者の個人情報について、適正な管理義務を課している。
参考資料:
脚注・出典
- 職業安定法(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省:職業安定法の概要
- 厚生労働省:ハローワーク(公共職業安定所)
- 厚生労働省:募集情報等提供事業について
- 厚生労働省:職業紹介事業の業務運営要領(令和7年12月23日適用)
- 国立公文書館:昭和22年 労働基準法・職業安定法制定
- 労働政策研究・研修機構:職業紹介法・職業安定法の一世紀(PDF)
- リクルートワークス研究所:Works University 労働政策講義2024 11公共職業安定所(PDF)
- 一般社団法人国際キャリア支援機構:職業紹介責任者とは
- 上野綜合法律事務所:【2025年最新】職業安定法の職業紹介とは?
- オーセンス法律事務所:職業安定法とは?違反した際の罰則は?
- Money Forward Biz:職業安定法とは?概要や雇用主・労働者が注意すべきポイントを解説
- パーソルテンプスタッフ:職業安定法の2025年までの改正や企業が留意すべき点を分かりやすく解説
- Talenco:【2025年4月施行】職業安定法改正完全ガイド
- 契約ウォッチ:【2025年施行】就職お祝い金の禁止とは?
- アドバンスニュース:職業紹介責任者の「兼任」認める、2026年4月施行
- 内閣府規制改革推進会議:職業紹介事業における職業紹介責任者の専属要件の見直し(PDF)








