最低賃金の基礎知識:月給25万円でも「違法」になるカラクリとは?

「うちは月給制だから時給なんて関係ない」「研修期間だから給料が安いのは当たり前」。もしあなたが勤務先からこのような説明を受けているなら、即座に警戒してください。それは最低賃金法違反という重大な犯罪行為である可能性が高いからです。

2025年10月の改定により、日本の最低賃金は史上初めて全都道府県で時給1,000円を突破し、東京都では1,226円に達しました [1]。これは、アルバイトだけでなく、正社員や契約社員、そしてナイトワーク従事者を含む「すべての労働者」に適用される絶対的なルールです。本記事では、一見高給に見える求人に潜む「最低賃金割れ」のトリックと、自分の身を守るための正しい知識を、最新の法律に基づいて徹底解説します。

目次

最低賃金とは何か?(絶対的効力)

最低賃金制度とは、国が賃金の最低額を定め、使用者はその金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。このルールの最大の特徴は、「強行法規」であるという点です。

合意があっても「無効」になる

たとえあなたが「私は未経験なので、時給800円で構いません」と同意し、その旨を記載した契約書にサインをしたとしても、その契約は法律上無効となります。法律で定められた最低賃金額(例:東京なら1,226円)との差額は、過去に遡って請求することができます [2]。

2025年10月改定のポイント

2025年度の改定は、物価高騰を背景に大幅な引き上げが行われました。

都道府県改定前(2024年度)改定後(2025年10月〜)
東京都1,163円1,226円
神奈川県1,162円1,225円
大阪府1,114円1,177円
全国平均1,055円1,121円

あなたの時給がこの金額を下回っている場合、会社は50万円以下の罰金という刑事罰の対象となります [3]。

ナイトワークに多い「見せかけ高給」の罠

月給制の求人において、最も注意すべきなのが「固定残業代(みなし残業代)」を悪用した最低賃金割れの手口です。

ケーススタディ:月給25万円の正体

例えば、「月給25万円(固定残業代80時間分を含む)」という求人があったとします。一見、悪くない条件に見えますが、分解してみましょう。

  1. 固定残業代の除外: まず、月給から残業代部分を引いて「基本給」を出します。仮に基本給が14万円だとします。
  2. 時給換算: 基本給(14万円)を、月の所定労働時間(例:170時間)で割ります。
    • 140,000円 ÷ 170時間 = 時給823円

東京都の最低賃金は1,226円ですから、この会社は時給で400円以上も違法な低賃金であなたを働かせていることになります。残業代でカサ増しして総額を高く見せているだけで、実態は最低賃金以下なのです。

「完全歩合制」でも最低保障は必須

「うちは完全歩合制だから、売上がゼロなら給料もゼロだ」という説明も、雇用契約を結んでいる限り違法です。

労働基準法第27条では、出来高払制(歩合制)で使用する労働者に対し、労働時間に応じた「一定額の賃金の保障(保障給)」を義務付けています [4]。この保障給の額は、一般的に最低賃金以上であることが求められます。つまり、たとえ売上がゼロでも、店に拘束されていた時間分の最低賃金(例:8時間×1,226円=9,808円)は支払われなければなりません。

自分の給料が適正か確認する方法

あなたの給料が法律を守っているか、以下の手順で計算してみてください。

  1. 対象となる賃金を出す: 基本給 + 諸手当(精皆勤手当、通勤手当、家族手当、残業代、深夜割増などは除外する)。
  2. 時間単価を出す: 上記の金額を「1ヶ月の平均所定労働時間」で割る。
  3. 比較する: その金額が、勤務地の都道府県の最低賃金を上回っているか確認する。

もし下回っていた場合、あなたは会社に対して差額を請求する権利があります。

まとめ:法律は「知っている者」だけを守る

「研修期間だから」「業界の常識だから」といった言葉に惑わされないでください。最低賃金は、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むために国が定めた、譲れないラインです。

これから求人を探す際は、単に「月給〇〇万円」という数字だけでなく、「基本給はいくらか」「固定残業代は何時間分含まれているか」を必ず確認してください。適正な賃金を支払う会社を選ぶことこそが、あなたのキャリアを守る第一歩です。

参考文献

関連するトピック

目次